東海若手起業塾と、公益財団法人スペシャルオリンピックス日本とコラボレーションして開催したイベント「東海地域のインクルージョン は 10 年でどう進む?Tokai Social Camp #1~スポーツ、障がい者雇用、多文化共生の視点から~」。
今年 9 月に愛知県で開催する「2018 年第 7 回ス ペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知」 に合わせ、東海若手起業塾のOBOGと、障がいの有無や国籍の違いにかかわらず、どんな人でも受け入れられ、幸せに暮らしていける社会づくり=「地域社会のインクルージョン(包摂)」についての現状や意見が交わされました。
インクルージョンに取り組むゲストの活動・事業や、インクルージョンを推進するために必要なことについて、分野を横断して話が展開された当日の模様をお伝えします!
|スポーツはツール?スポーツが作り出す、障がいの有無を超えた社会
スポーツの点からインクルージョンを進める公益財団法人スペシャルオリンピックス日本から、ゲストとして経営企画部の市川聖也さんにお越しいただきました。
「スペシャルオリンピックス」は、知的障がいのある人たちにオリンピック競技種目に準じたさまざまなスポーツトレーニングと競技会の機会を提供している国際的なスポーツ組織。
競技会としてはナショナルゲームと世界大会を開催しており、そのスポーツ競技としての記録だけでなく、世界のアスリートと交流する挑戦の場として認知を広げています。
競技会としてはナショナルゲームと世界大会を開催しており、そのスポーツ競技としての記録だけでなく、世界のアスリートと交流する挑戦の場として認知を広げています。
市川さんは、スペシャルオリンピックスの意義についてこう話します。
「知的障がいを持つ人にスポーツの場を提供することで、生まれてきて頑張れるというチャンスを提供する場としての機能を持っています。スペシャルオリンピックスの最大の目標は、自身と勇気を育んで社会参加をすること。スポーツはあくまで、共に生きる社会を作るためのツールなんです。」
実際に、スペシャルオリンピックスを通して人と接することが好きになったというアスリートの方や、不登校になった娘が笑顔と自信を取り戻したことに喜びを感じた家族など、スポーツが社会参加のきっかけになった例もあるのだそう。
また、知的障害のある人と、知的障害のない人がスポーツをする「ユニファイドスポーツ」にも取り組み、スポーツを通じてお互いの相手の個性を理解し合う関係を構築しています。
|障がい福祉「の」賃金という課題解決へ、障がい福祉「で」地域課題の解決する
「障がい者雇用」の面からインクルージョンに取り組むのは、東海若手起業塾7期OBの首藤政俊さん。
賃金が「円」ではなく「銭」なのが当たり前な障がい者の賃金アップを目指して、ご当地非常食などのオリジナル商品の開発や、アンテナショップの運営をおこなっています。
首藤さんは、地域の困りごとを障がい福祉で解決する取り組みをおこなっています。
「昨年度は、間伐材が問題視されている豊田市で、4つの障がい者施設が関わって、木製の社員証入れを作成しました。
共感してお金をもらおうと、クラウドファンディングで資金を集めて成功することができました。」
現在は新たに、オフィスグリコを参考に、障がい者施設で作ったお菓子をオフィス内で販売しています。
「6月末から、ブラザーさんでテストマーケティングとして1号機をスタートしました。7月からは豊田市内の企業で展開しています。
企業さんはオフィス内だと飽きがくるので、不特定多数の人が来るところにも設置しながら、2018年度中に50台の設置を目標にしています」
「誰もが生きがいを持って暮らせる地域社会」を目指し、様々な地域の困りごとを障がい福祉で解決する仕掛けを作っています。
|実験場がアップデートする、多文化共生の常識
最後のゲストは「多文化共生」の視点からインクルージョンを進めている、東海若手起業塾2期OG いるかビレッジの山元梢さん。
豊橋市にあるいるかビレッジは、国籍や世代の壁を超えて関わり合えるエコビレッジです。
豊橋市にあるいるかビレッジは、国籍や世代の壁を超えて関わり合えるエコビレッジです。
山元さんは「日本では、外国人が増えてきたり、障がい者の人たちが増えていたりしています。いるかビレッジは、今後ますますそうなっていくであろう世の中を、実験場として作っている場所。
そこに一般の人たちが参加して、障がい者施設、デイサービス、保育園などを運営しています」と話します。
重度の障がいを持った人や、ママさんも多く働いているといういるかビレッジ。
就労継続支援B型(※企業で雇用契約を結ぶのが難しい人が工賃をもらいながら働く制度)でも働けないほどの重い障がいを持ちあまり話せない方でも、油絵の先生として活躍している例もあるのだそうです。
山元さんは「この先生が絵を教えている時は、スタッフは他の仕事ができます。多様な人が関わることは、会社の人材不足の解消になっているんです」と話します。
「今日本では企業の人材不足が表面化して来ていますが、実は答えも問題もシンプル。
常識に隠れていて『こうすればいいだけ!』というものばかりですが、常識をアップデートできていない現状があります。視察に来てもらうこともありますが、中身は本当にシンプルなものですね。」
|インクルージョンを進めるキーワード
事業の説明のあとは、3人のクロストークへ。
ここでは、インクルージョンを進めるためには?というテーマで出たトークをご紹介します。
山元さん「インクルージョンを進めるためには、除外されている人たちに気づき、除外されているきっかけが何なのかを考えることが必要。
例えばこのイベントも、全員スーツで全員大人だったら、高校生は参加しにくいですよね。子どもがいるから参加しやすくなっています。
いるかビレッジでは、子どもを産んだママさんでも「他にも子どもがいるから、ここに来た方が楽」と、産んでからすぐ復帰してくれています。」
市川さん「学校教育の現場は、障がいの重い子は特別支援学級に入ってしまい、高校に入ると、知り合う場面がありません。
大人になって普通に生活していると、障がいを持った人と接する機会はほとんどなく、電車で知的障害の人が大声出していると、どうしたらいいのかわからないですよね。
もっと学校教育の場で、一緒に生活する場があればいいと思います。学校は勉強する場でもあるけど、勉強するだけでじゃなくていろんな人と生活するのも大事な勉強なのではないでしょうか。」
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インクルージョンを進めるために、まったく異なった分野からアプローチをする3人のゲストを迎えた今回のイベント。
参加者の方も「多文化共生に興味があって」という方や「インクルージョンという言葉は初めて知った」という方など、様々なバックグラウンドを持った方が集まったようでした。
Tokai Social Campは、今後も東海地方で社会活動に取り組む人などをゲストに迎えて開催していく予定ですので、ぜひご参加ください。