【イベントレポ】地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組みとは?

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さまざまな場面で活躍するゲストと一緒にこれからの東海地方を考えるイベント「Tokai Social Camp 」の第2弾となる「地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組みとは?」を開催しました。
 

 
東海地方でも多くのNPOや企業がプロボノをおこなっていることもあり、とても注目度の高かったこのテーマ。
企業、NPO、公務員、金融など、さまざまなセクターで活動する人たちが参加し、会場は満員となりました。
ゲストは、起業家、コーディネーター、そしてブラザー工業の社員であるプロボノの3人が、チームとなって半年間の支援期間を過ごす「東海若手起業塾」
中小企業のインターン・プロボノのコーディネートをする「NPO法人G-net」
静岡県でプロボノ推進事業に取り組む「NPO法人ESUNE」
東海地方でプロボノのコーディネートをおこなっている団体の事例を通して、「地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組み」を掘り下げた様子をお伝えします。
 

|「関わりたいと思っても出会えない」を解決する

 
一人目のゲストスピーカーは、岐阜でインターンシップ・プロボノのコーディネートをおこなうNPO法人G-netの石田さん

 

 
もともと学生向けインターンシップをおこなっていたG-netでは「地域には魅力的な企業がある一方で、関わりたいと思っても出会えない、関わり方がわからない現実」があることに着目し、社会人向けの兼業・プロボノマッチングサイト「ふるさと兼業」をリリースしました。
昨年リリースしたプロボノ兼業は大きな反響を呼び、これまで34プロジェクトに130人がエントリーし、約50件がマッチングしているのだとか。
石田さんはプログラムのコーディネートについて「地域の困りごとややりたいことが散らばっている中で、どう間に入って繋げるか?見える化するか?という役割を果たす人がいるか」と、ただ困りごとがある現場に人を投入するだけでなく、それを見える化させる人の存在を強調しました。

|場づくりの、その先へ。本当に課題を解決する手段としてのプロボノ

 

 
2人目のゲストは、社会参加と応援をひろげる問いをつくり、場をつくり、プロジェクトをつくる「NPO法人 ESUNE」代表理事の天野浩史さん
地域課題に取り組む人材を増やすために、静岡県でプロボノ推進事業に取り組んでいます。
もともと、地域の課題を話し合ってどう解決するのかを考える場づくりをおこなっていた天野さん。プロボノ事業を始めた経緯について、こう話します。
「企業さんとかNPOや個人が持っている困りごとをテーマに場づくりを行う中で、これって本当に地域の課題を解決しているの?人の参加を作っているの?というのを疑問に思うようになりました。」
「そこから、場づくりじゃなくて具体的なプロジェクトに関わりたい人っているんじゃないの?会社じゃないところで活躍したい人がいるんじゃないか?ということで、プロボノをスタートさせました。」
動物園と連携し「高齢者×健康」を切り口にした新規事業を作るプロジェクトを立ち上げるなど、静岡県のさまざまな団体とコラボしています。
 

|プロボノ経験者は、プロボノをどう見てる?

 
最初のスピーカーは、NPO法人G-netを通して、岐阜県土岐市の千古乃岩酒造でのプロボノをおこなった伊藤さん。ふだんはライターとして、医療系のWebサイトを運用しています。
「ストーリーのある展開をしたい」という千古乃岩酒造の募集を見た伊藤さんは「ストーリーのある展開には、文章を書くのが必要かな」と感じ、プロボノに応募。
プロボノの経験について伊藤さんは「文章化することに課題感を抱えている人が多いことを知ることができました。自分は文章化に困ったことがないので、こんなに悩んでいる人がいるんだ、という発見があり、客観視することができたと思います。」と振り返ります。
続いてプロボノ体験談を話してくれたのは、NPO法人ESUNEを通じてプロボノをしている長谷部さん

プロボノを始めてまだ間もないという長谷部さんは、ふだんは静岡市を介護福祉施設を運営する会社で、介護福祉士・ケアマネージャーとして勤めています。
長谷部さんが取り組んでいるのは、高齢者をターゲットに、動物園の顧客を増加させようというプロジェクト。
少子高齢化の中で、メイン顧客であるファミリー層が減っていく中で、健康をキーワードに高齢者に動物園に来てもらおうというものです。
コーディネーターの天野さんが「動物園に行った時、長谷部さんは高齢者のための手すりがあるかどうかをチェックして写真を撮っていた」と話すように、本業での経験が生きているようです。

最後に経験談を話してくれたのは、東海若手起業塾で、NPO法人まめっこの支援をする濱谷さん。

普段はものづくりに携わる濱谷さんは「家と会社の間って何があるんだろう、社会課題に対して自分ができることあるんじゃないか」と考え、東海若手起業塾のプロボノに参加。まめっこの中井さんと、育児復帰のプロジェクトの立ち上げをおこなっています。
「育休復帰ゲームを作れないか?という話になり、私自身若い頃、ボードゲームのカタンにハマった時期があったので、作れるんじゃないかと」と明るく話す濱谷さん。

現職の経験を生かす、というよりも、柔軟に起業家に寄り添っています。

 

|プロボノのコーディネートで大切なこと

 
 
最後は「コーディネーターから見るプロボノ」と題して、コーディネーターの方がどのようにプロボノが関わるプロジェクトを設計しているのかについてお話がありました。
G-netの石田さんは「それぞれの思いを、どう擦り合わせられるか?」を重視していると話します。
「例えば、プロボノの方が『こういうことが経験したい!』というのが強すぎると、それ以外のことができなくなってしまってうまくいきません。
お互いどんなことがしたいのかを合意してもらって、同じ方向を向いた上でスタートするのが大事です。」
 
これに関して、大学で学生にプロジェクトを作らせるというプログラムをおこなっていたESUNEの天野さんは、プロジェクトの設計で大切なことは以下の2点だと話します。
「まず1つ目に『なぜそれをやるのか』という目的、つまりなぜプロボノという関わり方でやるのかというのを、受け入れ側と確認すること。
そして2つ目が「どこを目指すのか」を受け入れ先とコーディネーターですり合わせること。
山登りのどこが頂点なのか分かっていないと、熱帯雨林に探検して行くような感覚になっていくので、ゴールのイメージをメンバー全員が分かっていて理解して行くことが大事です」

 
 
「地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組みとは?」をテーマに、様々な視点からプロボノを考えた「Tokai Social Camp 」。
参加者の方からも「プロボノの参加の仕方は、各々の目的によって変化してよいもので、きちんと自分の中で考え続けることが大事だと感じました。」「コーディネーターさんの存在や前準備段階のゴール設定等がプロボノの成果や納得感を得るには起業家さんとプロボノさんの双方にとっても重要な要素となると感じた。」などの声をいただきました。
「Tokai Social Camp 」は今度も開催していく予定ですので、ぜひご参加ください!