【第10期活動報告】10周年記念イベント「Tokai Innovators Ecosystem Summit for 2027」を開催しました
3月11日に東海若手起業塾の10周年を記念して開催された「Tokai Innovators Ecosystem Summit for 2027 〜若者のチャレンジが続々と生まれる生態系を育むために〜」。
起業家、NPO、学生などの枠組みを超え、総勢180名ほどの方が会場に集まり大盛況となった本イベントを振り返ります。
イベントは以下の流れで進行しました。
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第1部:「東海若手起業塾」第10期最終報告会
第2部:若者の挑戦を育む生態系創出会議
ーオープニングガイダンス:なぜ、今、若者のチャレンジを育む
ー分科会:前半・後半
第3部:クロージングセッション
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第1部「東海若手起業塾」第10期最終報告会
第10期最終報告会では、2017年度に支援を受けた3人の起業家が、事業内容や起業塾の成果を発表しました。
一人目は、焼き物で有名な岐阜県東濃地方で地場産業の活性化を目指す、合同会社プロトビ・TILEmade代表の玉川幸枝さん。
戦後と変わらない大量生産のための産業構造の中で、新しいサービス・商品・商流を生み出そうと考え東海若手起業塾に参加しました。
東海若手起業塾では「窯業界の空気を変える市場作り」「新しいマーケットを作る」「業界内外でのネットワークづくり」を実行し、タイルを愛するコミュニティの形成に取り組みました。
売り上げがピーク時の5分の1に落ち込んでいるというタイル業界ですが、共創プロデュースやコラボレーションなどを通して、将来的には新しいことが生み出せる成長産業を目指していきたいとのことです。
2人目は、NPO法人静岡フューチャーセンター・サポートネットESUNEの
天野浩史さん。
起業塾での半年間がスタートした当初は「地域課題に自分事でチャレンジできる人を増やす」をミッションに掲げ、企業向けにプロボノのプログラムを開発することをゴールとし、プロボノを事業化している団体や受け入れ団体のヒアリングや、トライアルなどを実施しました。
しかし、一度プロボノという枠を超えて経営者へのヒアリングやブラザー工業株式会社でのファシリテーショングラフィック講座などを実施して事業を捉え直し「地域に学ばせてもらう越境プログラムを通じて働く人の成長を応援する」という事業ミッションへと変わっていきました。
東海若手起業塾を通して、事業プランが現実味を帯びただけでなく、個人としても経営という視点が身についたそうです。
3人目は、日本モッキの
中山拓さん。「日本の森と木を次世代へ」を理念に掲げ、国産材の用途開発と利用促進を目指しています。
事業が3年目を迎え、殻を破るための刺激が欲しいと考えていた中山さん。
東海若手起業塾では、木材の販売者やデザイナー、林業関係者へのヒアリングを実施しました。ヒアリングを重ねていく中で、江戸時代以前からあった日本人と木の関係性という視点や、日本の森を守るというメッセージだけでは購買意欲には繋がらないという気づきを得たそうです。
また起業塾の支援チームからのアドバイスを受け、認知症予防としてパズルをレンタルするサービスをスタート。
事業を軌道に乗せていくため、他にも様々な事業を展開していく予定です。
最終報告会といえど、起業家の発表の後にはメンター陣から厳しいフィードバックが返ってくるのがこの起業塾らしさ。
今後の事業展開や「社会を本気で変えていく」社会起業家としてのあり方についてなど、エールのこもったコメントが聞かれました。
第2部:若者の挑戦を育む生態系創出会議
お昼を挟んで始まった第2部。
最初は「東海若手起業塾の10年間を振り返る」と題し、立ち上げのきっかけ目的、また関わった人々や成果について振り返りました。
登壇したのは、東海若手起業塾の代表を務める
毛受芳高さん、立ち上げから参画され現在はメンターを務めるNPO法人ETIC.の
山内幸治さん、初期に事務局長を務められたOKa-Biz副センター長の
高嶋舞さん、特別研究員、本塾生として2年間の支援を受けた人と動物の共生センターの
奥田順之さん。
東海地域らしさを大切にしながら、複数の団体で実行員会を形成したことにより様々な団体・人たちが関わって生態系が育まれてきたこと、そして起業家・支援者ともに育てられてきたことについて話が進行していきました。
続いては、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]の
川北秀人さんから、「なぜ、今若者のチャレンジを育む生態系が東海地域に必要なのか?〜2030年代の世界と東海地域を俯瞰する〜」と題してオープニングガイダンスが行われました。
「モノはコトと一緒でないと売れない時代に突入し、ものづくり産業の盛んな東海地域では今までと同じことをやるのではなく、新たなチャレンジが求められている」と川北さん。
2030年に向けた東海地域では「モノ+コト」で稼げる人材を育てて生かせる環境づくりが不可欠であり、そのために若者がチャレンジをし、孤立させない生態系が必要であるとのお話でした。
オープニングガイダンス後は、前半・後半に分かれて8つの分科会が行われました。
「CSR」「虐待・障がい・貧困」「若者の社会参画」「bizモデル」「ローカルベンチャー」「ソーシャルキャリア」「起業塾OB・OG」といった、これからの東海地域に関する様々なテーマが設けられ、どの分科会に行こうかと迷った方も多かったようです。
中でも大人気だったのが「 若者が地域課題の解決や社会に参画する新たなモデルづくり」。
それぞれ異なるセクターからの取り組みが紹介され、若者が積極的に意見を発信できる場づくりへの工夫が熱く語られました。
特に注目されたのが、最近はプロボノなどが積極的に行われディスカッションをする場は多く用意されてきている一方で、その場の議論に留まり実際には何も行われないことが多いという現状。
これについて山田崇さんからは、大手民間企業の若手社員を集めたリーダーシッププログラム「MICHIKARA」では、議論されたアイデアを一緒に参加していた市の職員が実行に移す仕組みが紹介されました。
また「東海若手起業塾生OB・OG大集合!今のチャレンジを語る」では、OBOGがそれぞれの事業についてプレゼンを行ったあと参加者が興味のある起業家ごとに別れて意見交換を行いました。
災害関連死の活動をしている
渡嘉敷唯之さんのテーブルでは震災がよくわかるゲームを行ったり、高校生のキャリア教育を行なっている
井上美千子さんのテーブルでは、学校と地域をつなぐため絵の具体的なアイデアブレスト行ったりなど、話が弾みとても盛り上がった分科会となりました。
また「SDGs・ESG時代のCSRー社会課題を事業と成長にどう結びつけるか?」では、ブラザー工業株式会社の出原遠宏さん、株式会社デンソーの岩原明彦氏さんを迎え、CSRの持続可能性について議論が行われました。
「“企業の社会的責任”というのはネガティブな印象がありますが、本来はポジティブなもの」と岩原さん。
企業にとってCSRとは「余裕があったら行うもの」ではなく、社員の社会感度を高めて気づく力を養成することが重要になるという話がされました。
第3部:クロージングセッション
長丁場となったイベントの最後を締めるクロージングセッション。
短い時間ではありましたが、参加者同士で1日の感想や学びを共有し、新たな行動や繋がりが生まれる予感を思わせる盛り上がりでした。
その後は、NPO法人ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さん・1期のOGである株式会社PEER代表取締役の佐藤真琴さんより、東海若手起業塾10周年に寄せてメッセージがありました。
「自分で自分の皮をむくこと」「東海若手起業塾がイケてる起業家の生態系の中心になるように、そしてそのためにはOB・OGの活躍が重要」と、この日のテーマである「若者のチャレンジが続々と生まれる生態系」にぴったりの言葉に、会場は良い緊張感に包まれて1日の幕を閉じました。
懇親会にも多くの参加者が集まり、夜まで盛り上がりを見せた1日となりました。
10期の活動もこれで終了ですが、11期以降も「若者のチャレンジが続々と生まれる生態系」の中心となるような東海若手起業塾となるよう取り組んでいきたいと思います。
(事務局・古井)