SPECIAL INTERVIEW

OB・OGのスペシャルインタビュー

Voice

大高 旭さん

有限会社ぬくもり工房

第3期生

活動地域:静岡県浜松市

伝統工芸を守るために。 新たなブランド展開で可能性を引き出す。

BtoBから、BtoCへ。
その一歩を踏み出すヒントが欲しかった。

祖父が創業し、父が営んでいた産元問屋に2003年に入社。遠州綿紬を扱っていた遠州事業部を閉鎖させると聞き、「昔ながらのはた屋を残したい、伝統工芸を守りたい」という気持ちから2006年に独立しました。起業当時はビルの1室に間借りしており、インターネットでの販売や、イベント販売・卸販売が事業の柱でした。何とか小売り展開をしたいと考えていましたが、遠州綿紬はすでに斜陽産業となっていて地元の人でも遠州綿紬に触れる機会は少なく、地域の伝統産業としての関心度もイマイチ…。

BtoCへ展開するためにはブランディングが必要だと思うものの、どんな一歩を踏み出したらいいのか迷っていたところ、「東海若手起業塾」のOBからエントリーを勧められました。厳しく指導されると聞いてましたが、日々の業務に追われ、しっかりビジネスと向き合う時間が無かった私にとっては貴重な機会になると思いました。

さまざまな事例研究を通じて、
お土産品としてのブランド化に成功。

起業塾ではビジネスプランに対し、メンターから「これはどう考えている?」「あれは調べたのか」など、あらゆる方向から指摘を受けて、聞いていた通りの厳しい洗礼を受けました。「本気で事業に取り組み、自分自身で答えを導きださないといけない」と身が引き締まりましたね。入塾当時は創業3〜4年目で、生地販売の売上ばかりを注力していて、「誰に売るか」を考えたことがありませんでした。遠州綿紬を使った雑貨やインテリアを展開してBtoCのビジネスを立ち上げるには、今までとはターゲットが異なることを指摘され、ブランディングの重要性を痛感。コーディネータから、東京で活躍するブランディングプロデューサーや参考になる企業を紹介され、過去の事例を研究しながら、自分のビジネスにはどんなブランディングが必要なのか自分なりに勉強を重ねました。そこで、辿り着いたのが、「お土産品」という位置づけです。これまで伝統工芸品として扱ってきた遠州綿紬ですが、土地柄を感じさせるお土産なら、誰でも気軽に手に取っていただけます。ハンカチやふろしきなどのアイテムをサービスエリアや百貨店、ホテル売店など人が集まる場所で販売。上代(小売価格)を500円に統一し、「あの人にはこれを」を手渡すシーンをイメージできるように売り場にも工夫しました。

商品の注目度が高まるにつれ、
本来めざしていた「普及と継承」に繋がる。

起業塾で「どこに、誰に、売るのか」を深く考えたおかげで、これまで以上にブランディングを重要視するようになりました。現在は、ブランディングパートナーと提携し、遠州綿紬ブランド「つむぐ」を展開。見せ方やパッケージを工夫することでターゲット層が明確になり、当初売上枚数200〜300枚だったハンカチが、今では年間10万枚売れるヒット商品に成長しました。メディアなどでも紹介されて商品の注目度が高まると、大企業とのコラボレーション企画も実現。浜名湖にある星野リゾートでは、全室「遠州つむぎの間」として、ベッドライナーや障子などに遠州綿紬がしつらえられています。こうして事業規模が大きくなるに伴って、地元での認知度も高まり、家庭科の授業で遠州綿紬を用いる中学校が増えてきました。遠州綿紬が使われる授業では、私が出張授業を行い、伝統文化を伝えつつ、地元ならではの魅力に気付いてもらう機会としています。中には、機織り職人になりたいという学生も現れ、起業時に描いていた伝統工芸の普及と継承にようやく繋がってきたと感じています。

Message

最後まで諦めない。
本気の覚悟で望んでください。

若さと勢いで起業したものの、起業6〜7年は赤字続きでした。そんな自分にとって、「東海若手起業塾」は最後の砦と言ってもいいくらいの試練の場でした。事業を軌道に乗せるためには前に進むしかなく、最後まで諦めなかったことが今に繋がっています。事業が健全でないと経済的な貢献や社会的意義は果たせないと気付かせてくれたのが起業塾です。事業を本気でやりたいなら、ぜひエントリーを。しかし本気の覚悟がないなら、辞めた方がいいと思います。

大高 旭さんのプロフィール