SPECIAL INTERVIEW

OB・OGのスペシャルインタビュー

Voice

今村 正人さん

株式会社カノリミテッド

第4期生

活動地域:岐阜県各務原市

社会的課題を解決させるには、 経済的・精神的に自立した事業に育てることが大切。

ビーチサンダル専門店へと転換を決意。
起業塾では、事業の継続と発展のヒントが得たかった。

父親が経営するスポーツ用品店の後継者として家業に関わることになりましたが、思っていた以上に経営不振が深刻で…。何とか経営改善しようと試みましたが、父と経営方針が一致せず、アウトドア部門を買い取るというカタチでやむなく起業。しかし、なかなか事業が軌道に乗らず、税理士に相談したところ、「経営資本が少ないので、資源を集中させた方が良い」とアドバイスを受けました。アウトドア部門はキャンプ用品やウェア、靴などアイテムが非常に幅広く、当時の資本力ではカバーしきれなかったのです。

そこで、バリエーションが豊富で、低資本でも対応できる「ビーチサンダル」に特化することに。他にない商品展開と上がり率の良さで、事業はまずます順調に動き出しました。スタートして3年目、これから店をどうしていこうかと考えていた頃に、異業種交流会で「東海若手起業塾」を知りました。当時の私は「商売を末永く続けるためにはストーリーが必要だ」と思っており、起業塾で専門家の視点からストーリーを引き出してくれることに期待して、エントリーを決めました。

事業の経営的・精神的自立を図るも
自分の考えの甘さを痛感させられた。

「東海若手起業塾」は、社会問題にどうアプローチするかを考え、社会起業家を輩出する場です。しかし、当時の私は社会的なミッションに関心はなく、自分の事業をどのように発展されられるか、そのヒントが得たくてエントリーしていました。選考時には「今の私は社会的課題を持っていないが、既存のビジネスの中から社会に貢献できるミッションを見つけたくてここに来た」と発表し、メンターから高い評価を得たことをよく覚えています。起業塾で大きな学びとなったのは、考え方のフレームワークができたこと。課題に対し、打ち手を考え、行動していく重要性を学び、今までそのプロセスをないがしろにしていたと猛省し、自分にはまだまだ考える余地があったことを思い知らされました。余談ですが、起業塾といえば忘れられない思い出があります。起業塾の会場まで送ってくれた友人の車に財布を忘れてしまい、友人が会場に届けてくれたんです。それがちょうど私のプレゼンの最中で。友人は、大勢の前で厳しく意見を受ける私を目の当たりにして、「涙が出た。お前、大丈夫か」と我が身を心配してくれました(笑)。しかし、心配しつつも「でも、お前のプレゼン内容もイマイチだったけどな」と付け加えられ、自分の考え方の甘さを痛感するきっかけになりましたね。

既存の事業に社会性を見出すことが経営者の大切な役割だと思う。

そもそも私の課題の核は社会的ミッションではありませんでしたが、「そこに何の目的があるか」を考えされられたことで、ビジネスにおいても次に打つ手を明確にし、着実に手を打つことができるようになりました。常に考える癖がついたこでとで、今では売れる物をしっかり売り、新しい事業への展開が広がってきました。社会的ミッションを実現させるには、まず経済的・精神的に自立できる事業に育てることが大切だと思っています。事業が安定化してきた今は、タイのブランドとコラボレーションして、オーガニック肥料だけで栽培された天然ゴム100%のビーチサンダルを開発・販売。自然分解される天然ゴムを使った環境に優しいエコブランドとして注目を集め、当社の人気商品に育っています。さらに今年からは、無着色の鼻緒を使用した商品を世界で最初に販売。ビーチサンダルを通じてようやく社会貢献できるようになってきました。さらに最近では、米原の醒ヶ井の古民家を活用した町並み保全事業の取り組みをスタートさせています。

Message

学びと縁が、事業を 成長させてくれました。

学びも重要ですが、その時に繋がった縁もかけがえのないものです。当時のご縁がわらしべ長者のように次から次へと繋がり、テレビ番組「マツコの知らない世界」や雑誌「Wedge」などに取り上げられ、新しい取引先を獲得できました。アーリーステージの起業家は思い通りにならないことが多く、当面の経営のために事業が変化することも大いにあることだと思います。ミッションを保ちつつも、事業の変化に躊躇せずに、柔軟性を高めて、あらゆる方向から検討し、考え抜くということが大切。「東海若手起業塾」にはそれを支えるチームメイトやプロフェッショナルがいるので、アドバイスを素直に聞き入れる姿勢で臨んでほしいですね。

今村 正人さんのプロフィール