SPECIAL INTERVIEW

OB・OGのスペシャルインタビュー

Voice

興膳健太さん

郡上里山株式会社

第3期生

活動地域:岐阜県郡上市

「猟師が食べていける商品づくり」から「山に広葉樹を増やす猟師」へ

猟師が食べていける未来を目指して

東海若手起業塾に入った時は「NPO法人メタセコイアの森の仲間たち」の代表になって2年目ほど経った時でした。当時は自然体験の事業がメインで、閑散期になる冬の仕事づくりがしたくて、狩猟を始めることは決めていましたが、狩猟でどうやって食べていくかを課題としていました。東海若手起業塾に入ったのは、同じタイミングで郡上に移住したこうじびらのきいちゃん(北村周さん)が東海若手起業塾の1期生だったことがきっかけです。仲間が華々しく先を走っていくのを見ていたので「よし、自分もここに行って事業を加速させよう!」と思いました。また、学生時代に関わっていた人たちが、実行委員にいたこともきっかけの1つでした。

 選考会では「猟師が食えないという課題を解決するために、食える商品を作る! 」そしてそのために「猪骨ラーメンを作りたい!」というプレゼンをしましたね。当時から奇をてらうのが好きで、審査員の気を引かせようと思って(笑)結果的に特別研究員として東海若手起業塾に入ることになりました。

猟師が減っている課題へ立ち向かう

メンターの方にはまず「ラーメン屋がやりたいの?」と聞かれたんですが、ラーメン屋がやりたいわけではなく(笑) 「猟師が食えて、里山が保全されている社会が作りたい 」と話すと「肉としてどれだけあり、どれだけあると食べていける?」と問われました。確かに安定供給もないし、ラーメンでは食べていけないと早々に結論が出て、他の方法を考えていくことになりました。印象に残っているのは、メンターの川北さんの「社会を変えたいのか、社会に良さそうなことをしたいのか」という言葉でした。日本全国の農山村で野生動物による農作物被害が社会問題になっている中、対策の担い手である猟師が減っているという課題に対して、結果は出したいと思って進めていきましたね。卒塾後の2015年には、獣害対策について調査した「獣害対策白書」を発行しました。川北さんにも見てもらって、アドバイスをもらって作りました。白書は評判も良かったですね。また、獣害対策専門の全国ネットワーク「一般社団法人ふるさとけものネットワーク」という団体を立ち上げました。振り返ってみると、東海若手起業塾は、田舎では感じないような、簡単にいうと刺激をもらえた場所でした。ずっと現場にいると目線が上がらない時もあり井の中の蛙になってしまいますが、東海若手起業塾に行くと目線が上がるし、向き合う時間を取れます。なんでも自分でやらないといけない田舎では、仕事と関係ないことで忙しいのが現実です。次何をするとか、進んでいるとかがちゃんと意図的に作れるという点で、田舎から行く価値はあると思います。

猟師として
山に広葉樹を増やす

最近は山のことばかり考えています。 これまでは、猟師という生産者の立場から狩猟やジビエの魅力を発信したり、地域のファンを増やしたりするためのツーリズムに力を入れ、生業化ができてきました。しかし2年前に豚コレラが発生してしまったことによってイノシシの個体数が激減したこと、猪肉としての資源活用ができなくなったことで、次の手を考える必要があります。そこで、鹿の増加によって課題となっている林業の被害対策に注力したいと思っています。具体的には、鹿が山で天然更新するはずの木の若芽を食べたり、植林した苗木を食べたりして木を枯らしてしまうので、防護ネットを張ったり、捕獲したりします。また、それらが原因で林業者が植えることをそもそも敬遠している現状もあるので、自分たちが猟師として鹿の対策をしながら木を植える事業に取り組みます。もちろん、植える木はいつか帰ってきてくれるイノシシのために広葉樹をできる限り植えていきたいですね。林業×猟師で山間地域の生業にして、イノシシや鹿と共存するための担い手づくりモデルを全国に広げていきたいです。

Message

「そんなことできる!?」 という人を待っています

東海若手起業塾は「何かやりたくて、そのためにこの場を利用するスタンス」の人が来る場所。 お金のため、自由のために起業する人もいますが、 東海若手起業塾は、社会を変えたい人のための場所だと思っています。セオリーがある業界よりも「これは難しい!」という業界でやる方が面白いし、「そんなことできる!?」という人がきてくれたら、面白いなと思います。過程を共に、苦しみながら、一緒にやっていきたいですね。

興膳健太さんのプロフィール