SPECIAL INTERVIEW

OB・OGのスペシャルインタビュー

Voice

鈴木 誠さん

三州フルーツ工房

第1期生

活動地域:愛知県額田郡

多角的かつ実践的な経営を学び、
農家から、起業家へと大きく前進した。

廃棄されるイチジクは年間2トン強。
捨てずに何とか商品化したい。

農家に生まれ育った私は、家業を受け継ぎ、イチジクの生産をはじめました。しかし、収穫の約2割のイチジクが市場規格に合わず廃棄。多いときでは15ケースを処分するために、毎日2時間かけて畑に穴を掘り、埋めていたんです。ですから、廃棄するイチジクを何とかしたいというのは以前からずっと課題になっていました。愛知万博でイチジクジャムを作って販売してみたところ、売れ行きがよく、味も好評でしたが、原価計算や販路開拓など、経営の知識が乏しく商品化に繋ぐことができずませんでした。

その後、花火屋さんでありながら、養殖に使用した海苔網を産廃の虫害ネットに再利用したという人がいることを知り、「この人なら再利用について何かアドバイスがもらえるかもしれない」と思い、会いに行くことに。熟しすぎたため市場に出せないイチジクを手土産に持っていったところ「これは美味しい。何とか商品化しよう」と花火づくりで使用する乾燥機を利用して「ソフトドライいちじく」を試作することになりました。ちょうどその頃、「東海若手起業塾」を知り、「ソフトドライいちじく」の商品化をめざした新しい事業に取り組むことにしました。

農業の枠を越えたたくさんの出逢いが
視野を広げ、考え方が柔軟になった。

起業塾では、コーディネーターが課題解決や事業展開に繋がるたくさんの人を紹介してくださいました。なんと、1年間で500枚がなくなったんですから、驚きです。入塾して最初に取り組んだ「ソフトドライいちじく」の評価リサーチでは、ミクニやルブランタンなど有名高級レストランの料理長を紹介され、直接会って試食してもらいました。ダメ出しされた部分を改善すると同時に「需要はあるか」「いくらなら売れるのか」なども考えさせられました。さらに「そもそもイチジクについて、どれだけ知っているのか」と問われ、1週間、東京に出張。うち4日間は、国会図書館でイチジクについて調べまくりました。残りの日程で法人営業を敢行。ガイアックスやキッザニアなど、農業とは一見縁がなさそうな、しかも一流の企業の営業本部長たちに会わせてもらい、経営や営業について話を伺いました。農業だけに従事していては出逢えない人から話を聞く機会に恵まれ、多角的に視野が広がりました。農業は経営や営業を学べる機会が少ないので、私にとっては起業塾のすべてが新しい学びでした。

常に本質から物事を考え、
手法の変化に柔軟に対応することが大切。

起業塾の学びで今でも大切にしているのは、本質は何かを考えること。「ソフトドライいちじく」は商品化に至りませんでしたが、現在は通常のイチジクに加えて、「超熟いちじく」という生イチジクの販売をはじめ、希少な商品として高値で取引されています。私の抱えていた課題は「捨てられるイチジクを何とかしたい」「農家の所得を上げたい」ということであって、「ソフトドライいちじく」の商品化は手段でしかなかったのです。扱う商品は変わりましたが、ミッションは当時のまま。熟しすぎてしまったイチジクは店頭で扱うのが非常に難しく、すべて廃棄されていましたが味はとても美味しいのです。デリケートな果物を梱包できる資材があること知ったのをきっかけに誕生した「超熟いちじく」は常に完売。廃棄はほぼゼロになりました。また起業塾でメディア戦略を学んだことも販売力向上に繋がっています。売り場での美味しい見え方を考え、商品と一緒に「美味しい食べ方」を伝えるPOPを配置。買う前に、美味しさを想像できる工夫をすることで売れ残りが激減しました。現在は農地も広がり、当時14トンだった年間生産量は21トンへ。日本の農業への貢献も視野に入れ、全国のトップ農家の交流会などを開催し、今後の農業について熱い議論を交わしています。

Message

学びを加速させるのは、 素直に学ぶ姿勢です。


「東海若手起業塾」には既存のカリキュラムはありません。すべてが各自の課題に応えるオリジナルの学びです。現状を脱却したいと考える人はぜひエントリーしてください。そして入塾したら、素直になることが大切。実は私がエントリーした時、何を聞かれても応えられるように完璧なシナリオを作って臨んだんです。メンターからの質問にも躊躇なく答えたところ、「それだけわかっているなら、自分一人でやればいい」と言われてしまいました。起業塾は課題解決の場です。何に困っているか、どんな助けが欲しいのか、ぜひ素直に言葉にしてください。

鈴木 誠さんのプロフィール