東海若手起業塾では、「プロボノ」としてブラザーの社員が起業家支援チームに参画しています。
今回お届けするのは、2月1日に開催する「地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組みとは?」前の特別企画としてはじまった「11期プロボノインタビュー」の第2弾。
今まさにプロボノとして活躍する皆さんに、プロボノで取り組んでいることや、プロボノを始めた動機、感じていることなどを伺い、プロボノの実態や、プロボノをする上で大切なことに迫ります。
第2弾となる今回は、アンビシャスネットワーク(以下、アンビシャス)の田中嵩久さんのプロボノをつとめる、ブラザー工業株式会社 経営企画部の中野晴康さんです。
第1弾、伊藤さんの記事はこちら:プロボノは「まず聞くこと」から。2期連続プロボノ伊藤さんが語る、プロボノ体験談
|立場関係なく同じ目線で。率直に、本気で向き合う。
ー中野さんが11期のプロボノで取り組んでいることについて教えてください。
大きく分けると、学習支援のモデル作り、業務改善、事業計画作りの3つです。
学習支援のモデル作りでは、アンビシャスが支援している中学生や、大学生のボランティアにアンケートをして、関わった人にとってのアンビシャスの価値を調査しました。業務改善では、役割分担の適正化や業務フローを効率的に回す方法を考えました。
ー中野さんのスキルがとても活かされていますね!事業計画づくりはどのように進めたんですか?
子どもたちがどんな生きづらさを抱えているのかについて、問題構造とステークホルダーを図にしていき、ビジョンである「すべての子どもたちが希望を持てる社会」へ向けて子どもたちの「自己肯定感」と「社会的接点」を、どう引き上げていくのかを考えました。
ただアンビシャスには3人のメンバーがいるので、考え方がぶつかることもあり、同じ方向に向かっていくのが難しかったですね。
ー中野さん自身はアンビシャスのメンバーではなく第三者という立場ですが、そのような場面で3人にどう接していったんですか?
同じ目線で接するようにしています。プロボノだからという立場は関係なく、一緒に行動して、自分も率直な意見をぶつけます。
これは僕自身のポリシーのようなものなのですが、自分自身が本気になるのは大事なことだと思いますし、自分の本気度によって、相手が本気になるかどうかも違うと思うんです。
ーアツいポリシーですね…!それはプロボノ活動以外でも考えていることなんですか?
いつも本気のつもりではあるんですが、会社の中では、本気になって自分の意思を主張することが恥ずかしいと感じたこともありました。
しかし、プロボノ活動の中で、社会課題に向き合う自分より若い人たちと行動することで、本気になることが大事だなと感じています。
それに対して彼らも本気で応えてくれるので、仕事で疲れた後でも、プロボノ活動は全然苦ではなくて、楽しいです。
|現場に行かないと分からないことがある。中野さんが現場に通い続けるワケとは
ー中野さんがプロボノ活動で、大切にしていることはなんですか?
彼らの現場に直接行くことを重視しています。
2週間に1回は現場に行っているんですが、高校受験間際の中学生面接の練習など、実際に学習支援も一緒にやっています。
ー2週間に1回現場に行くのは簡単なことではないと思うんですが、中野さんがそこまでして現場に行こうと思うのはどうしてですか?
現場に一緒に行かないと分からないことが多いと思っているからです。
どれだけ研修で話を聞いていても、ボランティアにはどんな子がいるのか、居場所支援は何が課題で何が強みなのか、子どもたちにとっての居心地の良さとは何なのかって、行かないと分からないんですよね。
ー具体的に「行かないと分からなかった、できなかった」と思ったことはありますか?
いっぱいあって「全て」という感じなのですが…笑
例を挙げるとすると、僕は最初、田中さんが「行政で救いきれないような深刻な状況にいる子を、大学生という子どもに近い立場の人が救えることがある」と言っている意味があまり分かっていなかったんです。
しかし実際に居場所支援に行ってみると、一見すると普通の子と一緒だけど、実は家庭に事情を抱えている、という子どもたちに出会うんです。
一般企業にいると分からないような、本当に子どもたちが置かれている状況や課題の深さを知って、田中さんの言葉の意味も分かるようになっていきました。
ー現場に行かないと分からないことの重要性がとても分かるエピソードですね。
最後に、プロボノ活動をする上でのアドバイスや思いをお願いします!
直接対話をすることや、支援する人の先にいる人たちを知ることが大切だと思います。
一般企業に勤めている人の中には、教えてやろうという意識を持つ人もいるかもしれないですが、プロボノ活動はふだんの業務とは違う経験なので学ぶことが多くあり、自分も一緒に成長していくものです。
そして成長していくためには、損得ではなくて、当事者意識を持って困っている人を助けるという意識や、課題に向き合うことが大事です。そこに本気になれば、その分だけ状況の変化を感じられ、必要とされるようになるので、やりがいにもなると思います。
僕自身、社会課題に向き合い、だんだんと向き合う人が増えていけば社会は変わると信じています。次の時代に生きる人が希望を持てる社会にすることに貢献していきたいです。
<編集後記>
「大企業からのプロボノさん」というと、固くてまじめに何かを教えに行くような印象を受けてしまいがちなもの。
しかし、中野さんの現場にこまめに足を運ぶ姿勢や、数々のアツい言葉に触れて、起業家とプロボノが一体となって社会を変えていく未来を感じました。
2月1日に開催される「地域や社会から真に必要とされるプロボノが生まれる仕組みとは?」では、さまざまな団体でのプロボノの体験談や、コーディネート団体の事例を聞くことができます。
プロボノの活用を考えているNPOの方や、プロボノ活動に興味のある企業の方、プロボノが気になっているという方はぜひご参加ください。